西本裕矢・尾城杏奈・小野田有紗 | ショパンコンクール予備予選2025に挑むピアニストを紹介!③

ショパンコンクール2025

西本裕矢|ショパンとともに歩む若き俊英ピアニストの軌跡

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

西本さんの《木枯らし》は、鋭さと正確性を兼ね備えたタッチが印象的でした。高度な技巧が求められるこの難曲を、見事にコントロールしきる安定感には脱帽です。音楽全体には激しさよりも、美しさと滑らかさが際立ち、輝かしい響きとともに洗練された風景を描き出していました。

幼少期から始まった、音楽への情熱

西本裕矢さんがピアノを始めたのは、わずか2歳半。地元・香川県高松市でその才能を育み、早くから音楽の世界で頭角を現しました。

東京藝大での研鑽|コンクールでの受賞歴

その後、西本さんは東京藝術大学附属高校から藝大に進学。現在、東京藝術大学大学院修士課程在学中。名門での研鑽を積む一方、国内外で多くのステージで経験を重ねていきました。

近年の活躍は目覚ましく、2024年にはアメリカ・ワシントンD.C.で開催された「米国ショパンピアノコンクール」で見事第1位を獲得し、さらにシマノフスキ最優秀演奏賞にも輝きました。2025年にはフランスのエピナル国際ピアノコンクールにて満場一致で26年ぶりに日本人として第1位優勝(日本人男性初)を果たし、国際的な注目を集めます。

ショパンとともに歩む——ピリオド奏法で蘇らせた音楽の魂

西本裕矢さんのレパートリーには、いつもショパンが寄り添っています。

西本さんのショパン解釈がさらに注目されたのが、2023年の第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール(ポーランド・ワルシャワ)の本大会への出場でした。
このコンクールでは、ショパンが実際に使用していたような歴史的フォルテピアノ(ピリオド楽器)
で演奏することが求められます。

「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」とは
ポーランド国立ショパン研究所が主催するコンクールで、19世紀当時のピアノ(プレイエルやエラールなど)を使用してショパン作品を演奏する国際大会です。2018年に第1回が開催され、2023年に第2回が行われました。演奏者は少なくとも2種類の歴史的ピアノを使い分け、当時の響きやタッチを再現することが求められます。まさに“ショパンの時代の音”を探究する、もう一つのショパン・コンクールです。

西本さんはその音色を通して、現代楽器では再現しきれないショパンの繊細さと躍動を見事に表現し、ポーランド国営ラジオでの演奏放送とインタビューも話題となりました。

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールでの西本さんの演奏
ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

現代のピアノとは響きの質感が異なり、芯のある甘美な音色が印象的です。
ショパンがこうした音で作曲していたと思うと、楽譜に込められた意図もより深く感じられます。

そして、2024年にはカワイコンサートシリーズでのショパンリサイタルを成功させ、2025年5月29日にはカワイ表参道パウゼにてオールショパンプログラムによるリサイタルも予定。

現代と歴史、技術と感性、そして何よりもショパンへの愛が、西本さんの音楽には静かに、しかし力強く息づいています。

故郷への想いと教育的活動

2023年高松国際ピアノコンクールでの4位入賞後には、地元の小学校でショパンのポロネーズなどを披露し、児童と校歌を共に歌うひとときもありました。

「彼らが音楽を本当に愛して、コンサートホールに音楽を聞きに来てくれる。そんなことを夢見ています」

西本さんのこの言葉には、音楽家としての使命感と未来への希望がにじんでいます。

2025年、ショパンコンクール予備予選へ

2025年4月、西本さんはついにショパン国際ピアノコンクールの予備予選に挑みます。過去の様々な受賞歴と、ショパンに対する深い造詣、そして日本と世界を繋ぐ表現力を武器に、世界最高峰の舞台を目指します。


尾城杏奈|静謐と情熱を併せ持つピアニストの軌跡

2020年 ピティナ特級にてグランプリを受賞した際の演奏
ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

こちらはピティナ特級グランプリを受賞した際の尾城さんのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番です。
並外れた技巧と冷静なコントロール力が光っていました。難曲であるにもかかわらず、その安定感は圧巻で、特にメロディラインの曲線的な歌い回しの美しさには目を見張るものがあります。
旋律が立体的に浮かび上がり、音楽の流れにしなやかに乗る見事な演奏でした。

研ぎ澄まされた感性と確かな実力

尾城杏奈さんは、国内外の著名なコンクールで優秀な成績を収めているピアニストです。

特に注目されたのが、2020年のピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリの受賞。この際には、文部科学大臣賞およびスタインウェイ賞も同時に受賞しています。

また、フランス国内の複数の国際ピアノコンクールでも頭角を現し、以下のような実績があります:

  • パリ国際ピアノコンクール 第1位
  • コニャック国際コンクール 第1位
  • イル・ドゥ・フランス国際ピアノコンクール 第2位

これらの受賞歴は、尾城さんが技巧と音楽的表現力の両面で高い評価を受けていることを示しています。

ソロ・リサイタルとメディア出演

尾城さんはこれまでに、東京交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団、そしてポーランドのトルン交響楽団などと共演しています。

また、NHK-FM「リサイタル・パッシオ」への出演をはじめ、各地で数多くのソロリサイタルを開催し、聴衆から高い支持を得ています。

録音活動とレパートリー

彼女の代表的な録音作品として、「スクリャービン・ピアノ・ソナタ全集 Vol.1」(2022年)、「Vol.2」(2023年)が挙げられます。スクリャービンという個性的かつ高度な音楽言語を扱う作曲家の作品に正面から取り組み、その世界観を丁寧に表現した演奏は高い評価を受けています。

学歴と現在の活動

尾城さんは東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学を卒業。在学中には、アカンサス音楽賞、同声会賞、藝大クラヴィーア賞を受賞しています。

大学院修士課程修了時にもアカンサス大学院賞および藝大クラヴィーア賞を受賞。

現在は、フランスの名門校エコールノルマル音楽院に在学中です。

指導を受けた音楽家

尾城さんは、これまでに東誠三氏、日比谷友妃子氏、ブルーノ・リグット氏に師事。

いずれも国内外で高い評価を得ている音楽家たちであり、その指導を受けた尾城さんの音楽性の豊かさは、彼女の演奏の随所に表れています。

これからの活躍に注目

日本とヨーロッパを舞台に、着実に活動の幅を広げている尾城杏奈さん。

その研ぎ澄まされた感性と表現力、そして音楽への真摯な姿勢は、多くの聴衆に深い感動を与えています。今後の活躍からも、目が離せません。


小野田有紗|世界を翔けるピアニストの軌跡

2023年ピティナ特級二次予選の際の演奏「ショパン:舟歌,Op.60」
ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

小野田さんのショパン《舟歌》は、まるで物語を語るような豊かな音楽性に満ちていました。全体を見渡すような構成力と、それを支える確かな技術が随所に感じられます。一音一音を慈しむように紡がれる旋律は、聴く者の心に深く染み入ります。クライマックスでは音の広がりが圧巻で、スケールの大きな世界を描き出していました。

非凡な才能が歩んだ飛び級の音楽人生

三重県四日市市で生まれた小野田有紗さんは、2歳でピアノとリトミックを、6歳でヴァイオリンを始めました。その後、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校に進学。16歳で渡米し、名門ジュリアード音楽院に奨学生として入学。なんと17歳で高校を飛び級卒業するという、非凡な歩みを見せます。

その後は英国へ渡り、王立音楽院での学士・修士課程を首席で修了。さらにニューイングランド音楽院にも在籍、著名なピアニスト・ダン・タイ・ソン氏に師事しました。

世界を舞台に——名だたるホールとオーケストラとの共演

これまでに小野田さんが演奏した舞台は、ロイヤルフェスティバルホール、ウィグモアホール、バービカンセンター、リンカーンセンター、アスペン音楽祭、スタインウェイホール、RTSスイス放送局など、まさに国際的。読売交響楽団や大阪交響楽団、セントラル愛知交響楽団、ポーランドのトルン交響楽団、ドバイのエミレーツ国際フィルなど、国内外の一流オーケストラとの共演も多数にのぼります。

シャネル・ピグマリオン・デイズのアーティストにも選ばれ、ネクサスホールでの6回のリサイタルシリーズも大きな話題となりました。

輝かしい受賞歴とショパンへの深い共鳴

小野田さんのキャリアは、数々の国際コンクールでの入賞歴に彩られています。

  • 2018年:ブダペストショパン国際ピアノコンクール 第3位
  • 2019年:ヒルトンヘッド国際ピアノコンクール メダリストおよび特別賞
  • 2020年:ユリウシュ・ザレンプスキー国際音楽コンクール 優勝およびショパン賞
  • 2022年:ダブリン国際ピアノコンクール 最優秀ベートーヴェン賞
  • 2024年:モントリオール国際コンクール セミファイナリスト

そのほか、ピティナ・ピアノコンペティションでは複数級で金賞や優秀賞を受賞しており、長江杯国際音楽コンクール第1位、日本クラシック音楽コンクール最高位、エトリンゲン国際ピアノコンクール(ドイツ)第3位、ショパン国際ピアノコンクールin ASIAコンチェルト部門第1位など、多くの輝かしい実績を重ねています。

特にショパンへの思いは深く、2023年のピティナ特級セミファイナリストインタビューではこう語っています:

「特にショパンはたくさんレパートリーもありますが、わたしにとって一番難しく、それでもって、一番いとおしい作曲家でもあります」

音楽の中心にあるのは“自分の声”

留学生活を通して、小野田さんは“自分の考えを持つこと”の大切さを実感したといいます。
「自分はどうしたいのか」を常に問いながら、音楽を紡いでいく。

その姿勢は、小野田さんの演奏に通底する意志の強さと個性、そして真摯な音楽への愛として表れています。今後、世界の舞台でさらにその才能が輝きを増すことは間違いないでしょう。


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