進藤実優・重森光太郎・島田隼 | ショパンコンクール予備予選2025に挑むピアニストを紹介!④

ショパンコンクール2025

進藤実優|若き才能が歩んだ軌跡と未来

2002年、愛知県大府市に生まれ、4歳からピアノを始めました。現在はドイツ・ハノーファー音楽演劇メディア大学に在籍し、世界的ピアニストであるアリエ・ヴァルディ氏に師事しています。前回、2021年ショパンコンクールの際には第3次ラウンドまで進出し、国内外で注目を集めました。

前回2021年ショパンコンクール、第3次ラウンド(セミファイナル)での進藤さん
ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

進藤さんの演奏でまず印象的なのは、ショパン作品への深い没入感です。まるで作曲家の魂に寄り添うかのように、音楽を慈しみながら丁寧に紡いでいく姿勢が感じられます。その中で、自然に呼吸するようなリズム感——音楽の脈動がしっかりと生きており、聴く者の心に静かに語りかけてくる演奏でした。

華々しい受賞歴と実績

進藤さんは国内外の数々のコンクールで輝かしい実績を残してきました。特に注目されたのは、2021年の第18回ショパン国際ピアノコンクールで第3次予選に進出したこと。また、第45回ピティナ・ピアノコンペティション特級ファイナルでは銀賞および聴衆賞を受賞しています。

さらに、北京青少年ショパン国際ピアノコンクール第3位、ジュネーブ国際音楽コンクール、ヴィーゴ市国際ピアノコンクール(第1位および聴衆賞)、ジーナ・バッカウア国際ジュニアピアノコンクール(第3位)など、国際的な舞台でも高く評価されています。

ピアノとの出会いと夢の変遷

幼い頃から人を助ける仕事に憧れを持ち、「ピアノを弾いて患者を癒せるお医者さんになりたい」と考えていたという進藤さん。ピアノは自然に続けていたものの、進路として決意したのは中学卒業時。ロシアのモスクワ音楽院付属中央音楽学校への進学を機に、ピアニストを本格的に目指し始めました。

留学と転機となった出会い

進藤さんがロシア留学を選んだ背景には、霧島国際音楽祭で出会ったピアニスト、ダン・タイ・ソン氏の存在があります。彼の助言により、モスクワのヴァレリー・ピアセツキー氏のもとで学ぶことを決意し、2018年から2021年まで同校で研鑽を積みました。

世界の舞台での活躍

進藤さんはこれまでにカーネギーホール(ニューヨーク)、チャイコフスキーコンサートホール(モスクワ)、モスクワ国際音楽の家、ラフマニノフホールなどで演奏。また、国内では新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルなどとの共演も果たしています。

2022年には、『ピアノの祭典2021 特級ガラコンサート』および『第45回ピティナ・ピアノコンペティション入賞者記念コンサート』に出演。ショパンの名曲やリストの「ハンガリー狂詩曲第12番」などに挑戦し、演奏の幅を広げています。

ピアニストとしての展望

現在はハノーファー音楽演劇メディア大学にてヴァルディ氏に師事しながら、さらに深い音楽表現を追求しています。目指すのは、作曲家が言葉にできなかった想いを音にして伝えられるピアニスト。ショパンを中心としながらも、他の作曲家の作品にも意欲的に取り組んでいます。

音楽以外の一面

進藤さんはクラシック以外にもシャンソンに魅力を感じており、美輪明宏さんや越路吹雪さんの歌声にも惹かれているとのこと。YouTubeなどを通じて知り、日常的に聴いているそうです。

最後に

進藤実優さんの歩みは、才能と努力、そして多くの出会いによって形づくられてきました。今後、さらに広がるであろう彼女の音楽の世界から目が離せません。

重森光太郎|聴衆の心に響く音を求めて

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

重森さんのラフマニノフは、旋律の一音一音を丁寧に噛みしめるように紡ぐ姿勢が印象的でした。豊かな響きを大切にしながら、音楽全体に奥行きをもたらしています。中でも、殻を破るようなクレッシェンドやドラマティックな盛り上がりには、表現することの喜びがあふれており、聴く者の心を揺さぶる演奏でした。

2000年生まれ、現在24歳の重森光太郎さんは、桐朋学園大学音楽学部を卒業後、同大学のソリスト・ディプロマコースに特待生として在籍中。さらに2023年秋からはフランス・パリのエコールノルマル音楽院へ、こちらも特待生として留学しています。

そんな彼が次に挑む舞台は、2025年ショパン国際ピアノコンクール予備予選。ロン=ティボー国際コンクールで第4位という華々しい実績を携え、今度はショパンの聖地・ワルシャワで、どのような音を響かせるのか注目が集まっています。

幼い頃の音楽との出会い

幼い頃は鉄道が大好きな少年だったといいます。小説や漫画を通して運転士に憧れ、乗り物の世界に夢中になっていた重森さん。そんな彼がピアノを始めたのは6歳のとき。母の手ほどきで鍵盤に触れたその日から、音の世界に少しずつ惹かれていきました。

当時は、好きな演奏を耳で覚えて真似して弾くのが何より楽しかったといいます。自由に即興をして遊ぶうちに、自然とピアノが生活の一部になっていきました。そしてやがて、著名なピアニストたちの演奏に触れるたびに、「自分もこんな風に弾きたい」と願うようになり、本格的にピアニストの道を志すようになります。

国内外での受賞歴と共演歴

重森さんは数々の国内外のコンクールで入賞を果たしてきました。2017年の第1回 Shigeru Kawai 国際ピアノコンクールで最年少ファイナリストとなり奨励賞を受賞。2018年にはショパン国際ピアノコンクール in Asia プロフェッショナル部門で銀賞、2019年には安川加嘉子記念コンクールで第1位を受賞するなど、若くして頭角を現します。

そして2022年、フランス・パリで開催されたロン=ティボー国際ピアノコンクールにおいて第4位を受賞。これを機に、国内外のオーケストラとの共演の機会も広がりました。東京フィルハーモニー交響楽団、オーケストラアンサンブル金沢、セントラル愛知交響楽団、パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ管弦楽団などとの共演を重ねています。

学びと音楽への姿勢

室内楽や伴奏にも積極的に取り組んでおり、「他者と音楽をつくることで、音楽の幅が広がり、コミュニケーション力も深まった」と語っています。

コロナ禍での変化と成長

コロナ禍では、多くの演奏機会が中止・延期になり、戸惑いもあったといいます。しかしその時間を「自分の音楽を深める機会」と捉え、楽譜を深く読み、作曲家の意図に向き合うことで、演奏に対する姿勢も変わっていったとのこと。結果としてレパートリーも広がり、より深い表現ができるようになったと語っています。

大切にしていること

数多くの舞台に立つようになった今でも、重森さんが一貫して大切にしているのは「聴衆の心に響く演奏」。コンクールや演奏会においても、「また聴きたい」と思ってもらえるような演奏を常に心がけているそうです。

ラフマニノフへの思いとこれから

2023年にはラフマニノフ生誕150周年を記念したコンサートで、ピアノ協奏曲第3番を演奏。「和声や旋律の融合がとても美しく、特に第2楽章が好き」と語るその演奏には、深い敬意と熱い思いが込められていました。

今後はさらなる国際コンクールへの挑戦とともに、世界の第一線で活躍できるピアニストを目指して歩みを進めていくといいます。

プライベートの一面

音楽以外では、幼い頃から鉄道が好きで、今でも「いつか運転してみたい」という夢を持っているそうです。乗り物に関する本を読んだり、時には妄想を膨らませたりしながら、音楽とはまた違った楽しみ方を大切にしている様子がうかがえます。

おわりに

華やかな受賞歴や共演の裏にあるのは、確かな努力とまっすぐな音楽への向き合い方。重森光太郎さんの演奏には、いつも「聴く人の心に届けたい」という誠実な想いが込められています。その真摯な姿勢は、これからも多くの人々の心を動かし続けることでしょう。

島田隼|ジュリアードで飛躍を続ける若きピアニスト、ショパンの舞台へ

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

ファツィオリの繊細な響きとともに紡がれるノクターン。島田さんはその美しさと悲劇性を深く感じ取り、まさに音楽の語り手としての存在感を示しています。聴く者を作品世界へと誘う力があり、アメリカで培った高い技巧がショパン・コンクールでどう発揮されるのか、大いに注目です。

2025年4月27日から開催される第19回ショパン国際ピアノコンクール予備予選に、日本から出場する若きピアニスト、島田隼(しまだ じゅん)さん。東京生まれの島田さんは、現在アメリカ・ニューヨークのジュリアード音楽院プレカレッジに在籍し、2017年からハン・クァン・チェン(Hung-Kuan Chen)氏とテマ・ブラックストーン(Tema Blackstone)氏に師事しています。

音楽性と技術力の高さで、国内外の舞台で存在感を放ってきた島田さん。日本の文化庁による「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」による助成を受けているほか、米国ショパン財団、アルテミシア財団(Artemisia Foundation)の奨学金も授与されています。

国際的な受賞歴と演奏歴

島田さんは、2022〜2023年にかけて以下の主要な国際コンクールで受賞しています:

  • ハートフォード・ショパン国際ピアノコンクール:第1位
  • マンハッタン国際ピアノコンクール(ヤングアーティスト部門):金賞
  • フィラデルフィア国際音楽祭コンチェルトコンクール:第2位(審査員はフィラデルフィア管弦楽団、ロサンゼルス・フィルの首席奏者)

これらの受賞をきっかけに、アルテミシア財団(Artemisia Foundation)の支援によるサロン・シリーズ「ステラ・シリーズ(Stella Series)」などにも出演。さらに、ジュリアード音楽院内のポール・ホール(Paul Hall)やモース・ホール(Morse Hall)でのソロ・リサイタルをはじめ、ザルツブルクのシュロス・ヘーヒ(Schloss Höch)、浜松のアクトシティホール、深圳ピアノフェスティバル(Shenzhen Piano Festival/オンライン)など、国内外で演奏経験を重ねています。

コンチェルト・デビューと過去の活動

2018年、ジュリアード・プレカレッジ協奏曲コンクールに優勝し、13歳でプレカレッジ・オーケストラと共演。以降もシカゴ国際音楽コンクール、プリンストン・スタインウェイ協会コンクール、ヤング・ヴェローナ国際コンクール、バンコク国際ピアノコンクール、日本クラシック音楽コンクールなどで入賞を重ねてきました。

また、モーツァルテウム夏期アカデミー、アスペン音楽祭、エッパンピアノアカデミー、シカゴ国際オンライン音楽フェスティバルなどにも参加し、ヨヘベド・カプリンスキー(Yoheved Kaplinsky)、アリ・ヴァルディ(Arie Vardi)、リリヤ・ジルベルシュタイン(Lilya Zilberstein)、ジュリアン・マーティン(Julian Martin)といった名だたるピアニストからの指導も受けています。

興味は音楽だけにとどまらず

音楽にとどまらず、文学、クラシック映画、印象派の絵画、最新のアニメーションなど、多岐にわたる芸術分野にも強い関心を持つ島田さん。その広い視野と感性が、彼の演奏表現にも豊かに息づいています。

ショパン・コンクール予備予選へ

2025年のショパン・コンクール予備予選に出場する島田さん。世界中から集まる若きピアニストたちの中で、彼がどのような選曲と解釈でショパンの音楽に挑むのか、注目が集まります。これまでの研鑽と実績が、ワルシャワの舞台でどのように結実するのか、多くのリスナーが期待を寄せています。

おわりに

若干10代で数々の舞台を経験し、今なお進化を続ける島田隼さん。その演奏には、研ぎ澄まされた技巧の奥に、豊かな感情と知性が宿っています。ショパン・コンクールという大舞台で、彼がどんな音楽を響かせるのか──その瞬間を、世界中の聴衆が心待ちにしています。

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