東海林茉奈・辻本莉果子・山縣美季 | ショパンコンクール予備予選2025に挑むピアニストを紹介!⑤

ショパンコンクール2025

東海林茉奈|ショパンとともに歩むポーランド在住のピアニスト

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

東海林茉奈さんのショパンの演奏は、やさしく温もりのある音色で、まるで語りかけるように音楽が進んでいきます。深く集中し、ショパンの世界を丁寧に描いているのが印象的です。旋律の歌い回しも大変美しく、聴き手を静かに引き込む力を持った演奏です。

兵庫県出身のピアニスト、東海林茉奈(しょうじ・まな)さんは1997年生まれ、現在28歳。東京藝術大学を首席で卒業後、同大学大学院修士課程を修了し、2022年よりポーランドに留学。現在はワルシャワを拠点に活動しています。

ショパンを中心とした研究と演奏活動

4歳からピアノを始め、数々の国内外のコンクールで入賞。大学院ではショパンを研究テーマに選び、「弟子によって残された資料をもとにした演奏美学」に関する論文を執筆しました。2021年には第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選に出場、2023年にはショパン国際ピリオド楽器コンクール(本大会)にも参加し、ショパンへの深い理解と実演を積み重ねています。

現在はポーランド・ビドゴシュチ音楽院にてパヴェル・ヴァカレツィ氏に師事し、カタジーナ・ポポヴァ=ズィドロン氏の指導も受けています。ポポヴァ氏との出会いは2019年。ラファウ・ブレハッチ氏の師でもある彼女の演奏に感銘を受け、「この人に習わないと一生後悔する」と弟子入りを志願したことが今につながっています。

主な受賞歴と演奏歴

ピティナ・ピアノコンペティション全国大会F級金賞、G級銅賞をはじめ、クラシック音楽コンクール全国グランプリ、松方ホール音楽賞奨励賞、セシリア国際音楽コンクール第1位、ヨーロッパ国際ピアノコンクールin Japan特級グランプリ(ショパン協会賞)など多数。

近年では、2024年のブラームス国際コンクール(オーストリア・ペルチャッハ)でセミファイナルに進出するなど、国際的な舞台でも活躍を広げています。

共演・演奏会活動

これまでに大阪交響楽団、トルン交響楽団(ポーランド)、シレジア・フィルハーモニー管弦楽団、兵庫県立西宮高校音楽科オーケストラ、西宮交響楽団と共演。

ポーランドではワジェンキ公園でのショパン・コンサートやショパン博物館でのリサイタル、KAWAI Showroom Warsawでのソロ公演などに出演。日本国内ではラ・フォル・ジュルネ東京、中之島ミュージックフェスティバル、日本財団ランチタイムコンサート、ヤマハ・ライジングピアニストコンサートなど、幅広く活動。

また、室内楽では2023年に東京・春・音楽祭にて入江一雄氏と共演するなど、多彩な演奏活動を展開しています。

人柄と音楽観

演奏を通じて「温もりや愛、作曲家の描いた感情を共有すること」を大切にし、音楽を社会とつなげる表現として捉えています。趣味は食・映画・読書で、文学や哲学、美術にも強い関心を持ち、「人の心の動き」にも鋭敏なまなざしを向けているのが彼女の演奏にも表れています。

料理研究家リュウジさんのレシピに救われている日々も、どこか等身大の人柄を感じさせてくれます。

おわりに

東海林茉奈さんは、ショパンの母国ポーランドでその音楽と真摯に向き合い、国際的な舞台での表現を磨き続けています。その音楽には、深い研究に裏打ちされた知性と、感情の機微を伝える繊細な美しさが宿っています。

辻本莉果子|ヨーロッパで研鑽を積む新進気鋭のピアニスト

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

辻本さんのショパンは、やさしく包み込まれるような響きが心地よく、音と音の「間」にまで深い意識が行き届いているのが伝わってきました。音楽の流れはしなやかで柔らかく、美しい曲線を描くように自然に流れていきます。まるで、静かに語りかけてくれるような安心感のある演奏でした。

京都府出身のピアニスト、辻本莉果子(つじもと・りかこ)さんは3歳よりピアノを始め、国内外で着実に実績を積み重ねてきました。東京藝術大学音楽学部ピアノ専攻を卒業後、イタリアのアゴスティーノ・ステッファーニ国立音楽院修士課程を満場一致の賞賛付き満点、特別名誉賞で修了。2024年度からは、ドイツ・ケルン音楽舞踊大学(Hochschule für Musik und Tanz Köln)に留学し、さらに研鑽を積んでいます。

国際コンクールでの実績

辻本さんはこれまでに数々の国際ピアノコンクールで入賞を果たしています:

  • ジュリオ・ロスピリオージ国際ピアノコンクール(イタリア)第2位
  • ワルシャワグランドプリックス国際ピアノコンクール(ポーランド)第2位
  • パルマドーロ国際コンクール(イタリア)第5位
  • クラヴィコロン国際ピアノコンクール(ドイツ)ファイナリスト
  • ラフマニノフ国際ピアノコンクール(日本)第2位

また、ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会では、A1級〜G級まで複数回入選・受賞を重ね、金賞や銅賞などを獲得。2023年度にはザンボン奨学生にも選ばれました。

国内外での演奏活動

日本・イタリアをはじめ、アメリカ、チェコ、ドイツ、スペイン、ポーランド、ドバイなどで演奏経験を持ち、国際的な活動を展開。国内では、京都市の公式CM「たぶん、京都の市立高校は日本一すごい」にも出演するなど、多方面にわたる活動を行っています。

また、東京藝術大学内で開催されたベーゼンドルファー音楽大学シリーズにも推薦され出演。さらに、カリーニングラード交響楽団、グロセット交響楽団、オーケストラ・コンチェタンテ京都とコンチェルト共演を果たしています。

近年の注目公演と展望

2025年1月には、銘楽堂にて「オール・ショパン・プログラム」のピアノリサイタルを開催。ショパンのワルツやノクターン、バラード、スケルツォなどを披露し、「日本人のショパン熱」についての自身の考えも語りました。現在は、ケルン音楽舞踊大学でさらなる表現力と解釈力を磨きつつ、国際コンクールにも果敢に挑戦中です。

その深い音楽性とチャレンジ精神をもって、辻本莉果子さんは今後ますます注目されるピアニストの一人といえるでしょう。

リヴォルノ国際ピアノコンクール セミファイナルでの演奏をチェック!

2024年に開催されたリヴォルノ国際ピアノコンクールのセミファイナルで、辻本莉果子さんはモーツァルト、ショパン、プロコフィエフといった多彩な作品を披露しました。

繊細な音色と豊かな表現力が際立つこのステージは、彼女の演奏について知るうえでも貴重な記録です。ぜひ下記リンクからその演奏をご覧ください。

▶️ 演奏動画はこちら(YouTube)

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

↑こちらの演奏は、ピティナ特級から4年後の辻本さんのステージ。音楽に力強さと広がりが加わり、ぐっと深みが増しています。音色もより輝かしく、フレーズ一つひとつに命が宿っているような印象です。より自由に音楽を羽ばたかせているように感じました。


山縣美季|信念と繊細さを兼ね備えたピアニスト、世界に挑む

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

山縣さんの「アンダンテ・スピアナートと大ポロネーズ」は、まるで光をまとったような音の粒が次々に現れて、そのすべてが繊細なハーモニーに包まれていきます。構成はとても自然で、音楽がすっと心に入ってくるような優しさと品格を感じます。まさに、珠玉の音色が詰まった宝石箱のような、美しさに満ちた演奏です。

神奈川県鎌倉市出身のピアニスト、山縣美季(やまがた・みき)さんは、2002年生まれ。4歳からピアノを始め、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、同大学音楽学部を卒業。現在は同大学院修士課程に在籍しつつ、フランスのパリ国立高等音楽・舞踊学校(CNSMDP)の第二課程(修士課程相当)にも学び、国内外で研鑽を積んでいます。

ピアノとの出会い

ピアノとの出会いは、幼稚園時代。母親から「ピアノか体操かどちらかをやってみない?」と勧められたのがきっかけで、週末の音楽教室でピアノを始めました。グループレッスンでは進級していく過程が楽しく、譜読みを先に進めることに喜びを感じるなど、幼いころから向上心の芽が育まれていきました。

初めてのコンクールは6歳の時に出場したカワイ音楽コンクール。以降、舞台に立つ喜びを原動力に、多くの舞台を経験していきました。

苦悩と成長の中学時代

しかし、中学生になると状況は一変。同世代に突出した才能を持つライバルが現れ、いくら努力しても結果が出ない苦しみに直面します。度重なる敗北感から「ピアノをやめたい」と思ったこともありました。

その中で転機となったのは、母から「普通高校に進んでもいいのよ」と言われた一言。「なぜそんなことを言うの?」と悔しさを燃料に、むしろ強い意志で音楽の道を選び、東京藝大附属高校への進学を決意しました。

数々の栄誉と確かな実力

その努力は実を結び、2020年には第89回日本音楽コンクールピアノ部門で第1位を受賞。あわせて野村賞、井口賞、河合賞、三宅賞、アルゲリッチ芸術振興財団賞も授与される快挙を達成します。

ピティナ特級ファイナル入選、ノアンフェスティバルピアノコンクール第1位(ノアン賞)、かながわ音楽コンクールでは最優秀賞と神奈川県知事賞など、国内外の主要コンクールで実績を重ね、実力派若手ピアニストとして注目されています。

また、シレジアフィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団、東京フィルなどとの共演を通じて、協奏作品における表現力も高く評価されています。

音楽との向き合い方と表現力

山縣さんがとりわけ深い共感を抱く作曲家はシューベルト。2022年に参加した「シャネル・ピグマリオン・デイズ」では、5回のリサイタルすべてにシューベルト作品を取り入れました。彼の穏やかさの裏にある葛藤と複雑さを「天国的」と評し、音楽の奥行きを感じ取るその感性は、多くの聴衆を惹きつけました。

「楽譜と向き合っている時間が一番楽しい」と語るように、楽譜の読み込みを重視する姿勢は演奏にも表れます。「まずは忠実に読むこと。それがもっとも自由な表現につながる」という信念が、安定した精神力と自然体の演奏を支えています。

音楽とともに生きる

演奏活動の合間には、愛猫(サイベリアン2匹)との時間やおいしいものを楽しむ一面も。ドレスのデザインにも関心があり、ステージ衣装にも自らの感性を反映させています。特にブルックナーやチェリビダッケに対する敬愛も深く、音楽を通して自身の世界を表現することに情熱を注いでいます。

ショパン国際ピアノコンクール予備予選へ

2025年、山縣美季さんはショパン国際ピアノコンクールの予備予選に挑みます。シューベルトやショパンを愛し、音楽に誠実に向き合うその姿勢は、確かな技巧とともに彼女の演奏に深みをもたらします。世界の舞台で、どのような響きを聴かせてくれるのか、今から大きな注目が集まっています。

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