山﨑亮汰|天賦の才を開花させたピアニスト

ゆうき
ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位の実力者、山﨑さん。
上記演奏「ラ・カンパネラ」では山﨑さんの優しく温かい音楽性、そしてドラマティックで『聴かせる』演奏を聴くことができます!
1998年生まれ、福島県郡山市出身。2025年現在、山﨑亮汰さんはアメリカ・ロサンゼルスのコルバーン音楽院(Colburn Conservatory of Music)に在籍し、ファビオ・ビディーニ氏に師事しています。現在はパフォーマンス・ディプロマ・プログラムに所属し、技術と表現力のさらなる高みを目指し研鑽を積んでいます。
ピアノとの出会いと才能の発現
山﨑さんは、小学1年生まではサッカーや水泳、ダンスなどを習っていた“ごく普通の少年”でした。ピアノを始めたのは小学2年生のとき。当時の先生は彼のあまりの才能に、「自分では教えきれない」と他の先生に指導を託したといいます。
ピアノを始めてわずか2年、小学4年生でピティナ・ピアノコンペティションC級金賞を受賞。1年目でショパンのワルツ、2年目には《木枯らしのエチュード》をポリーニと同等のテンポで弾いたというエピソードも記録に残っています。
若き日々の快挙──15歳でピティナ特級最年少グランプリ
2012年、ジーナ・バッカウアー国際ジュニアピアノコンクール(米・ソルトレイクシティ)で日本人初優勝。2014年、史上最年少タイ(15歳)でピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、聴衆賞、文部科学大臣賞を同時受賞しました。
コンクール(競争)から離れて、自分の音に向き合った日々
しかし山﨑さんは一時的にコンクールから距離を置き、「自分の音楽と向き合う」時間を選びました。
2014年にピティナ特級グランプリを受賞した後、周囲からの注目が集まる中で、あえて競争の場から一歩引き、自らの音楽と真摯に向き合う時間を確保したのです。彼はその時期について、「目先の評価よりも、自分の音楽性を深めることに集中したかった」と語っています
留学と新たな挑戦
山﨑さんは2016年、クーパー国際コンクール(米・クリーヴランド)で優勝という快挙を成し遂げます。
その翌年、桐朋学園大学に進学しますが、さらなる飛躍を求めて2年次で退学。アメリカ・ロサンゼルスへと渡りました。
アメリカのコルバーン音楽院では、師・ファビオ・ビディーニ氏の助言を受け、弱点克服のためラフマニノフのエチュードOp.39全曲に挑戦。その過程で音色へのこだわりや解釈力にさらに磨きをかけました。
また、コルバーン音楽院の公式アーティストプログラム「Colburn Artists」のメンバーとしても活動しており、演奏活動の幅を世界的に広げています。2025年にはクライバーン国際ピアノコンクールに出場予定で、ショパン国際ピアノコンクール予備予選の注目出場者の一人です。
圧巻の舞台と未来展望
2023年のブゾーニ国際ピアノコンクールでは、予選中の体調不良(大量の鼻血)を乗り越え、チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》を演奏して第3位およびジュニア審査員賞を受賞。2024年には凱旋リサイタルを開催し、満席となる人気を示しました。
2025年のヴァン・クライバーン、そしてショパンコンクールへと歩みを進める山﨑亮汰さん。その一音一音に宿る美しさと強さが、今、世界の舞台で注目を集めています。
奥井紫麻|ロシア音楽とともに歩む、演奏家としての確かな軌跡

ゆうき
ロシアピアニズムを学び、これまでも数多くの演奏会をこなしてきた奥井さん。
上記の「幻想ポロネーズ」での深みのあるダイナミックな音楽表現は圧巻です。
2004年5月生まれ。現在はスイス・ジュネーヴ高等音楽院にてネルソン・ゲルナー氏に師事するほか、グネーシン音楽大学でもタチアナ・ゼリクマン氏に学ぶ。2023年にグネーシン特別音楽学校ピアノ科を特別表彰付きで首席卒業。
ピアノとの出会いとバレエからの転身
ピアノを始めたのは5歳半。もともとは3歳から習っていたバレエがきっかけで、「音楽がわかっていた方が良い」という母の提案から始まった。譜読みができるようになり、新しい曲を弾く楽しさに惹かれて次第にピアノに集中するようになった。
トリフォノフとの出会いと憧れ
7歳のとき、モスクワでチャイコフスキー国際コンクールのファイナルを聴き、ピアノ部門優勝者ダニール・トリフォノフに出会う。彼の演奏に衝撃を受け、「今でも理想のピアニスト」と語るほどの強い影響を受けた。
エレーナ・アシュケナージ氏の薫陶
同じく7歳から、故エレーナ・アシュケナージ氏(ウラディーミル・アシュケナージ氏の妹)に師事。厳しくも温かいレッスンを受け、2〜3時間におよぶこともある指導の中で、1音1音を大切にする感性を磨いた。
12歳での決断──ロシアへの留学
ロシア音楽と文化に強く惹かれ、12歳でモスクワ音楽院付属中央音楽学校へ留学。化学や生物といった一般科目もすべてロシア語で学ぶ厳しい環境のなか、現地の芸術文化と触れ合いながら実力を培った。
豊富な演奏歴とオーケストラ共演
8歳でオーケストラと初共演。10歳からはウラディーミル・スピヴァコフ氏と世界各国で共演を重ねる。12歳ではゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団と共演。15歳にしてベルリン・フィルハーモニー、ウィーン・ムジークフェラインなど欧州の著名ホールでソリストデビューを果たす。
NHK交響楽団(原田慶太楼指揮)、東京フィル(大友直人指揮)、東京交響楽団、読売日本交響楽団など、日本国内でも多数の共演歴を誇る。
ロシア・ピアニズムの真髄と影響
「音楽を心から歌うことがロシア・ピアニズムの核心」と語る奥井さん。美しいレガート、豊かな響き、ロシア語のイントネーションを意識した演奏を大切にし、文学の読解も表現に生かしている。
心に残る師の言葉
タチアナ・ゼリクマン先生の「音楽家として限界はない。良い演奏ができたとしても、次はさらにその上を目指すべき」という言葉を胸に刻み、常に高みを目指して努力を重ねている。
新たな環境での挑戦
国際情勢を鑑み、2023年にグネーシン特別音楽学校を卒業後、スイス・ジュネーヴへ拠点を移す。今後はフランス語やフランス音楽の習得にも意欲を見せており、さらに幅広いレパートリーと表現力の深化が期待される。
主な受賞歴と評価
奥井紫麻さんは、演奏会を中心に豊富な国際経験を積み重ねながらも、いくつかの国際コンクールでも確かな実績を残しています。
- 2013年:ロシア国営文化テレビ主催「くるみ割り人形」国際TVコンテスト ピアノ部門第2位、および全部門総合聴衆賞
- 2015年:クライネフ・モスクワ国際ピアノコンクール ジュニア部門 最年少第1位
- 2016年:モスクワ国際グランドピアノコンクール 最年少受賞
- 2022年:パデレフスキ国際ピアノ・コンクール 入賞
- 2024年:ジュネーヴ・フレデリック・ショパン協会 Prix Mireille Klemm 賞 受賞
これからの展望
チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》をはじめ、ロシア音楽だけでなくショパンやモーツァルト、ラヴェルにも強い親和性を感じているという奥井紫麻さん。内面から音楽を「歌う」そのスタイルで、彼女の音楽はこれからますます広がっていくだろう。
尼子裕貴|欧州で磨かれる知性と表現力

ゆうき
トビリシ国際、フンメル国際での第2位受賞と素晴らしい実績。
上の演奏動画「マゼッパ」では、瑞々しい若さあふれるエネルギッシュな演奏を聴くことができます!
4歳よりピアノを始め、桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部を経て、同大学院在学中に渡欧。現在はオーストリア・ザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学(Universität Mozarteum Salzburg)にて、ソロ演奏専攻修士課程(MA Solo)に在籍中。国内外のコンクールで多くの受賞歴を持ち、東京フィルやアルメニア、ジョージア、スロヴァキアの各国立管弦楽団との共演歴を有する実力派ピアニストである。
ピアノとの出会いと進路のきっかけ
ピアノを始めたのは4歳。最初は教養の一環としてのレッスンだったが、6歳のときにサントリーホールで国際コンクールのガラコンサートを聴き、「自分もあの舞台に立ちたい」と強く感じたことが、音楽を志すきっかけとなった。
学びの軌跡と広がる視野
桐朋学園の音楽教室から高校、大学、大学院へと一貫して音楽教育を受けながら、ソルフェージュ・和声・音楽史・音楽理論などを地道に学び、実技においてもより深い解釈が可能に。2023年度には江崎スカラシップ奨学生、2025年にはローム・ミュージック・ファンデーション奨学生に選出される。
留学とモーツァルテウムでの研鑽
桐朋学園大学院在学中に渡欧。現在はモーツァルテウム音楽大学にて、ソロ演奏家としての技術と芸術性を磨いている。これまでに三輪久恵、中井恒仁、J.ロイシュナー、P.ギリロフ各氏にピアノを、室内楽を練木繁夫、若林顕、辰巳明子、池田菊衛、三瀬和朗、C.シー各氏に師事。
国際舞台での評価
演奏活動と並行して挑戦した国際コンクールでは、以下のような結果を残している:
- 第7回 トビリシ国際ピアノコンクール(ジョージア)第2位
- 第11回 フンメル国際ピアノコンクール(スロヴァキア)第2位
- 全日本学生音楽コンクール 高校の部 第1位
- 日本音楽コンクール 第3位
また、東京フィルハーモニー交響楽団をはじめ、アルメニア、ジョージア、スロヴァキアの各国立オーケストラと共演を果たし、国際的な評価を高めている。
音楽を続ける意味──コロナ禍での内省
パンデミックによる演奏機会の制限は、「なぜ音楽を学ぶのか」「音楽は人生に必要か」という根本的な問いを突き付けた。結果として、「音楽は生きる上で必須ではないが、人生を豊かにしてくれる存在である」との確信に至ったと語っている。
これからの展望と人柄
現在はFP(ファイナンシャル・プランナー)資格の取得にも取り組むなど、幅広い知識と教養を追求する姿勢も併せ持つ。近現代作品に関心を寄せ、特にスクリャービンやベルクといった作曲家へのアプローチを深めている。
ヨーロッパ的思考と日本的勤勉さを併せ持つ、知性と感性のバランスに優れたピアニストとして、今後ますますの活躍が期待される。
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