エリザベート王妃国際音楽コンクール2025|日本人出場者・課題曲・日程まとめ

国際コンクール
BOZAR (Centre for Fine Arts) during morning civil twilight in Brussels, Belgium

世界三大音楽コンクールのひとつ、エリザベート王妃国際音楽コンクール(Queen Elisabeth Competition)。2025年はピアノ部門が開催され、日本からは6人の実力派ピアニストが出場予定です。

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

本記事では、エリザベート王妃コンクール2025ピアノ部門の開催概要・日程・6人の日本人出場者・課題曲などを詳しく解説します!


エリザベート王妃国際音楽コンクールとは?

エリザベート王妃国際音楽コンクールは、1937年の創設以来、世界中の若手音楽家にとっての登竜門として知られています。開催地はベルギーの首都ブリュッセルです。

ピアノ部門は4年に一度開催され、これまでにギレリスやアシュケナージなど、名だたる巨匠たちが優勝者として名を連ねてきました。

このコンクールが特に注目されるのは、その過酷とも言える独自の審査方式です。たとえば

  • ファイナル前にはいわば「缶詰合宿」の隔離期間があり、外部との連絡手段を断たれた中で新作を仕上げる
  • セミファイナルやファイナルでは、初めて目にする楽譜を短期間で完成させて演奏する必要がある
  • あらかじめ2種類のプログラムを準備し、どちらを演奏するかは審査員が直前に決定

こうした審査内容により、単なる技術力だけでなく、精神力・柔軟性・即興対応力など、音楽家としての総合力が厳しく問われるステージとなっています。


2025年ピアノ部門の日程

  • 一次予選:5月5日(月)〜5月10日(土)
  • セミファイナル:5月12日(月)〜5月17日(土)
  • ファイナル:5月26日(月)〜6月1日(日)
  • 受賞者コンサート:6月上旬予定

 ▶️ コンクール公式サイト(英語)


日本人出場者(2025年ピアノ部門)

  • 亀井聖矢:ロン・ティボー国際コンクールにて第1位を受賞。いま最も注目される日本人ピアニスト。
  • 久末航:ミュンヘン国際音楽コンクールで第3位。ドイツを中心に活動。
  • 桑原志織:ブゾーニ、ルービンシュタインといった名門国際コンクールで第2位に入賞。繊細さと安定感を併せ持つピアニスト。
  • 中川優芽花:クララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝。欧州を拠点に躍進。
  • 太田糸音:ベルリン芸術大学を首席修了。近年は国際コンクールでの上位入賞が続く注目の若手ピアニスト。
  • 吉見友貴:前回2021年大会セミファイナリスト。2度目の挑戦に期待がかかる。

🎼 一次予選の課題と演奏内容(2025年ピアノ部門)

2025年の一次予選では、約25分間のリサイタル形式で審査が行われます。参加者は以下の構成でプログラムを準備し、事前に提出します。

🎵 プログラム構成

  • 古典派ソナタ(第1楽章)
    • ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(Op.31まで)の作品から1曲
  • 自由曲
    • 上記のソナタと合わせて合計14分以内に収める
  • エチュード4曲
    • 以下のカテゴリーから1曲ずつ選ぶ:
      • ショパンのエチュード
      • リストのエチュード
      • リゲティのエチュード
      • その他の作曲家によるエチュード(例:スクリャービン、ラフマニノフ、ドビュッシーなど)

合計で約25分となるように構成します。

しかしこのプログラムをすべて演奏するのではなく、演奏開始の約1時間前に審査員が実際に演奏する曲を個別に指定します。


第1次予選を通過するのは最大24名です。

そして、見事1次予選を通過したピアニストには、セミファイナルで演奏するための約5分間の新作課題曲(本コンクールのために書き下ろされた未発表作品)の楽譜が配布されます。

この課題曲については、本番まで一切の公開演奏が禁止されており、非公開の状態で準備を進める必要があります。

🎼 セミファイナルの課題と演奏内容(2025年ピアノ部門)

一次予選を通過した最大24名が進出するセミファイナルは、2025年5月12日〜17日にベルギー・フラジェで開催されます。審査は二部構成で行われ、各出場者は「協奏曲」と「リサイタル」の両方に挑むことになります。

🎻 演奏①:モーツァルトのピアノ協奏曲

以下の5曲から1曲を選び、ヴァハン・マルディロシアン指揮、ワロン王立室内管弦楽団との共演で演奏します。

  • 第9番 変ホ長調 K.271
  • 第15番 変ロ長調 K.450
  • 第17番 ト長調 K.453
  • 第18番 変ロ長調 K.456
  • 第27番 変ロ長調 K.595

※カデンツァは自作可。オーケストラとのリハーサルは前日に1回、本番直前に1回のみ行われます。

🎹 演奏②:ソロ・リサイタル

セミファイナリストは以下の内容でリサイタルに臨みます

🔶 最大30分のリサイタル・プログラムを2種類用意

  • それぞれ最大30分以内のプログラムを2つ提出
  • どちらを演奏するかは本番の約29時間前に審査員が指定
  • 一次予選で演奏した作品は含めることができない

🔶 コンクールのために書き下ろされた約5分の新作課題曲

  • 課題曲:アナ・ソコロヴィッチ作曲《Two Studies for Piano(ピアノのための2つの練習曲)》
  • 本コンクールのために特別に書き下ろされた作品で、5月12日に世界初演
  • 一次予選通過者には譜面が配布され、本番までの公開演奏は禁止

このように、セミファイナルでは即応力・完成度・創造性に加え、未知の作品への理解力と対応力も審査対象となります。

24名の出場者のうち、12名がファイナルへ進出します。

そしてファイナルの1週間前には、外部との連絡手段を断たれた「缶詰合宿」が始まります。


🏰 ファイナル前の最終試練:チャペル缶詰合宿

エリザベートコンクールの伝統として、ファイナリストは本番の約1週間前からエリザベート音楽センター(チャペル)に滞在し、次のような特別なスケジュールで過ごします:

  • 1日1〜3人ずつ、演奏順にチャペル入りし、1週間の準備期間を経て本番へ
  • 新作協奏曲の楽譜は、チャペルに到着後に初めて渡される
  • 滞在中は:
    • 一般との接触は禁止(家族・友人とも面会不可)
    • スマホ・パソコンの使用も制限
    • オーケストラとのリハーサルは非公開で、各ファイナリスト1回のみ
    • 食事やレクリエーションなどを通じて他ファイナリストと交流

たった1週間で、初見の新作を仕上げ、オーケストラとの本番に臨むという、精神力と集中力も試されます。まさにこのコンクールならではの濃密な試練と言えるでしょう。

ピアノ講師<br>ゆうき
ピアノ講師
ゆうき

たった1週間の閉ざされた時間。でも、同じ立場で音楽に向き合う仲間との交流は、きっと一生の宝物になるのではないでしょうか。


🎼 ファイナルの課題と演奏内容(2025年ピアノ部門)

セミファイナルを勝ち抜いた12名のファイナリストが、2025年5月26日(月)〜5月31日(土)にかけて、ベルギー・ブリュッセルのボザール(パレ・デ・ボザール)大ホールで行われる決勝ステージに臨みます。

🎵 ファイナルの演奏内容(2曲)

各ファイナリストは、次の2つの作品を演奏します:

  • 自由選択のピアノ協奏曲(約30分)
     └ 自由に選んだ協奏曲を、大野和士 指揮・ブリュッセル・フィルハーモニックと共演
  • コンクール委嘱の新作協奏曲(10〜15分)
     └ 2025年課題曲:クリス・デフォールト作曲《Music for the Heart》
     └ 決勝の初日にあたる5月26日に世界初演されます

この2曲の披露により、テクニック、表現力、即応力、創造性といった多面的な音楽力が試されます。


📅 ファイナル本番と審査結果

ファイナルは毎晩2〜3名が出演します。すべての演奏が終わった5月末に審査結果が発表され、6月初旬には入賞者コンサート(ブリュッセルなど)も予定されています。


過去の日本人入賞者と影響力

エリザベート王妃コンクールは日本人にも縁が深く、2021年には務川慧悟(3位)・阪田知樹(4位)が上位入賞。過去には内田光子、若林顕、仲道郁代なども名を連ねています。

このコンクールでの入賞は、世界的キャリアへの大きな一歩。世界各国での演奏機会が広がり、演奏家としての評価が一気に高まります。


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おわりに

世界最高峰の舞台に挑む若きピアニストたちの演奏は、音楽ファンならずとも必見です。2025年のエリザベート王妃コンクール(ピアノ部門)は、例年以上に日本人出場者に期待がかかる年でもあります。

本ブログでは、今後もコンクールの進行状況や注目ポイントを随時お届けしていく予定です。どうぞ引き続きご覧ください。


アイキャッチ画像: Photo by Trougnouf (Benoit Brummer), via Wikimedia Commons, licensed under CC BY 4.0.

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